おうちでどう教育するべき?STEM教育とはなにか徹底解説
文部科学省では、STEAM教育を開始しました。名前は聞いたことがあるけれど、それってなに? という保護者もいますよね。
そこで今回は、STEAM教育について解説します。
小学生・中学生の子どもの保護者はぜひ参考にしてください。
STEAM教育とは
STEAM教育とは、教育ジャンルの頭文字を取った複合的な教育のことです。STEAMの頭文字を見てみましょう。
「S」→「Science」(科学)
「T」→「Technology」(技術)
「E」→「Engineering」(工学)
「A」→「Arts」(芸術・リベラルアーツ)
「M」→「Mathematics」(数学)
上記5つの学習領域に、創造性を交えた教育をSTEAM教育と呼んでいます。
それぞれの教育分野をくわしく見ていきましょう。
科学
STEAM教育の1つめは、科学です。
化学ではありません。
科学は、自然現象を学びますが、必ずしも子どもたちが学校で実験できるとは限りません。危険な実験や規模が大きな実験は、学校ではなかなかできないのです…。
そこでタブレットやパソコンを使った教育です。ICT教材を使用することで、自然現象や実験を動画で見ることができるため、教科書の画像よりも理解が得られやすいのです。
技術
STEAM教育の2つめは、技術です。
ここで言う技術とは、中学校で習う「技術・家庭」とは異なります。
文部科学省の学習指導要領では、プログラミングのほかに「材料と加工の技術」、「エネルギー変換の技術」、「生物育成の技術」という項目も含まれています。
STEAM教育では、プログラミングなども学びますが、地道で細かい作業を続ける必要があり、根気が求められます。
根気よく作業をする技術も、STEAM教育で身につけていきます。
工学
STEAM教育の3つめは、工学です。
工学って難しい学問そうですよね…。工学とは、自然や原理をもって社会をよりよくするための方法を学ぶ学問とされています。
1つ前の技術で得た知識を使って、ロボット工学やものづくりに活かしていく力を身につけます。工学部に進学する、工学を用いた仕事に就くなど将来にも役立つでしょう。
芸術・リベラルアーツ
STEAM教育の4つめは、芸術・リベラルアーツです。
科学、工学、技術などで得た知識をアウトプットするためには、発想力や想像力が求められます。STEAM教育で学ぶことで、アイディアが出やすくなるメリットがあるのです。
リベラルアーツはあまり聞いたことがない方もいるでしょう。かんたんに解説します。
【リベラルアーツとは…】
リベラルアーツとは、職業や専門に直結しない教養のこと。現代人が生きていくために必要な手段を学ぶ学問のこととも言われています。
数学
STEAM教育の5つめは、数学です。
数学は論理的思考を養います。この論理的思考は社会に出ても役立つので、学生時代に学ぶことは必須です。(実際に学習指導要領にさんすう・数学は含まれていますよね)
科学、技術、工学、数学で、論理的思考や問題解決能力を養い、芸術で学んだ発想力や想像力で論理的思考や問題解決能力をアウトプットできるようにすることがSTEAM教育の目的と考えられます。
なぜ今STEAM教育なのか
STEAM教育の概要を解説しました。しかし、なぜ今STEAM教育が求められているのでしょうか。
近年は、AI技術が進化し、さまざまな分野でAIやIoTが取り入れられました。AIやIoTが進化したことで、AIに仕事を取られてしまう人も出てくる時代です。このような時代にも対応できる人材が必要で、早期のうちから育成することが大切だとして、文部科学省はGIGAスクール構想などによる教育改革をおこないました。
つまりSTEAM教育は、文部科学省が進めている教育ということです。これからの未来、コンピューター、人工知能が当たり前になる社会で必要な人材の教育と言えます。
「AI」、「IoT」、「GIGAスクール構想」というワードが登場したので、解説していきます。
AIとは
AIとは、Artificial Intelligenceの略のこと。Artificialは「人工的な」という意味で、Intelligenceは「知能」という意味。つまり、AIとは「人工知能」のことです。
人工的に作られた知能を持つ実体と定義づけられますが、そのくわしい定義については複数にわかれています。定義までは細かく理解せず、「人工知能」とだけ理解しておけばよいでしょう。
IoTとは
IoTとは、Internet of Thingsの略です。ひと昔前までは、インターネットに接続するものは、パソコンや携帯でしたが、今では家電もインターネットに接続されるようになりました。スマート家電と呼ばれていますよね。
このように物をインターネットに接続して、データのやりとりをすることをIoTと呼んでいます。
GIGAスクール構想とは
GIGAスクール構想とは、文部科学省の取り組みの1つ。GIGAは「Global and Innovation Gateway for All」の略です。「すべての児童・生徒のための世界につながる革新的な扉」を意味しています。
これだけではよくわからないですよね…。
子どもたちは学校の授業で、ひとり1台タブレット端末を与えられ、タブレット端末を使用した学習をしています。これはGIGAスクール構想の一環です。コンピューターを使用して、楽に勉強しよう、というものではなく、創造性を育む教育の一環として、生徒ひとりにつき1台の端末を与えて学習をさせています。
GIGAスクール構想は、生徒がタブレットを使用して学習すること、タブレットを用いて今までにはなかった学習効果を得ることと言えます。
【なぜGIGAスクール構想が生まれたの?】
GIGAスクール構想が生まれた背景を解説します。
日本は、学校の授業におけるデジタル機器の使用時間はOECD加盟国で最下位なのだそうです。
また、日本の学校のICT(情報通信)環境整備状況は脆弱ともされています。
しかし、学校での学習では、ICTの利用はOECD加盟国の中で最下位にもかかわらず、学習以外では平均以上という結果が出ているのです。
つまり、日本は学校ではICT教材を使用しないのに、ゲームやチャット、SNSには時間をかけているということ。
これはもったいない、学校でもICT教材をもっと活用すべきだ、と文部科学省は考えて、GIGAスクール構想が生まれました。
2020年には新型コロナウイルス感染症の拡大があり、学校は休校を余儀なくされました。このときに日本のオンライン授業や教育のデジタル化の遅れが顕在化され、GIGAスクール構想が前倒しで開始されたのです。
休校中にオンライン授業を展開させることで、おうちにいながらにして学校の授業を受けることができるようになりました。
調査では、自治体の96.1%でひとり1台の端末配備が完了しています。
GIGAスクール構想を新型コロナウイルス感染症の拡大が後押ししたような結果となったのです。
参考:GIGAスクール構想の実現について:文部科学省 (mext.go.jp)
STEAM教育とSTEM教育の違いとは
新型コロナウイルス感染症が拡大する前は、世界でSTEM教育が広がりました。
STEM教育とSTEAM教育は名前がとても似ていますよね。(Aがあるかないかの違い)
STEAM教育とSTEM教育はどう違うのでしょうか。
こちら結論ですが、A(芸術)があるかどうかの違いのみです。
もともとはSTEM教育(芸術がない)が推進されていましたが、ものづくり、科学、技術、数学には発想力や想像力が必要なので、あとからA(芸術)が追加されました。
基本的に両者は複合的な学習なので、違いはありません。STEM教育に芸術をくわえたものがSTEAM教育です。STEM教育をより実践的にしたものがSTEAM教育と言えるでしょう。
STEAM教育のメリット
STEAM教育とは、科学、技術、工学、芸術、数学を取り入れた複合的な教育だということがわかりました。
では、STEAM教育を取り入れるメリットを解説します。
- 将来に活かせる
- 論理的思考が身につく
- 問題解決能力が身につく
将来に活かせる
STEAM教育のメリット1つめは、子どもの将来に活かせることです。
STEAM教育では、科学、技術、工学、芸術、数学の能力を養うことができます。これらの専門分野に進学・就職することに有利になるのです。
特に理系科目については、苦手意識を持つ子も少なくありません。STEAM教育を受けることで、工学や数学を学ぶ機会ができ、学習へのハードルが低くなり、実は理系科目が楽しいと感じる子も増えるでしょう。理系の学科に進学する、理系の仕事に就くこともできるかもしれません。
論理的思考が身につく
STEAM教育のメリット2つめは、論理的思考が身につくことです。
STEAM教育では、ICT教材(タブレットやPC)を取り入れて学習をします。このICT教材を使うことで、子どもの好奇心や興味、関心が高まるとされているのです。
ICT教材の画像や動画を見ながら学習すると、イメージが広がりやすく、論理的思考も身に付きやすいとされています。
実際に蝶々の羽化は、なかなか実際に見ることはできません。(いつ羽化するかは予想がつかないため)これを動画で閲覧することで、子どもの知的好奇心が育まれるのです。
うちの娘が少し前に花の開花のタイムラプス動画をタブレットで見せてくれました。お花が実際にどう開くのか、観察日記ではわからないような様子も動画だとわかりやすいこともあるのです。
問題解決能力が身につく
STEAM教育のメリット3つめは、問題解決能力が身につくことです。
STEAM教育では、プログラミングも学びます。プログラミングは入力が1つでも間違っていると、機能しません。どこが間違っているのか、自分で疑問点や問題点を探して見つけることで解決する力が求められます。
プログラミングを通じて失敗を繰り返すことで、子どもの問題解決能力が伸ばせるでしょう。
STEAM教育の問題点やデメリット
最近の学習であるSTEAM教育。メリットを記載しましたが、デメリットもあります。現在STEAM教育を取り入れてはいますが、問題点も現場で上がっているとのこと。
ここでは、STEAM教育のデメリットや問題点を解説します。
- 学校側の人材不足
- 地域格差
- 家庭の格差
- ICT機器の遅れ
学校側の人材不足
STEAM教育のデメリット・問題点1つめは、学校側の人材不足です。
STEAM教育は、新しく取り入れられた教育の1つです。学校の先生が教員として採用された時点では、まだSTEAM教育はなかったという方もほとんど。そのため、STEAM教育の対応できない先生も少なくはないのです。
現在はプログラミング教育が始まっていますが、プログラミングを学生時代に学んでいない教師がほとんどで、対応しにくいと感じている人もたくさんいます。実際にプログラミングスクールに通っている生徒のほうが知識が豊富で、先生のほうが劣っているという現実も…。
現場の先生がSTEAM教育に対応できず、てんてこ舞いになっていることがデメリット・問題点として挙げられます。
地域格差
STEAM教育のデメリット・問題点2つめは、地域格差です。
STEAM教育は、地域格差があると言われています。地域によっては、インターネット環境が整っていないため(Wi-Fiが入らない、5G対応地域ではないなど)、STEAM教育を取り入れたくてもなかなかできない地域もあります。
家庭の格差
STEAM教育のデメリット・問題点3つめは、家庭の格差です。
タブレットは公立の学校であれば無料で支給されることもありますが、私立の場合は各家庭で購入であることも…。(学校がタブレット代を集金するシステム)高校の場合も、タブレット端末が無料支給されないことがほとんどなので、家庭で用意しなければいけません。
地域差があるようですが、タブレット代は各家庭負担としている自治体は多いようです。
学校から端末の指定をされていない場合は、安い端末を買ってあまり性能がよくないもので学習をする子も出てきます。端末格差も出てくるでしょう。
子どもが学校でタブレット端末を使用した学習をしていても、保護者が端末の使い方がわからず家庭で学習の指導がしにくいということもあります。特に働く保護者の場合は、子どもの学習を見る時間が少なくなるため、タブレットを取り入れた学習だと、より指導しにくいと感じるのです。
ICT機器の遅れ
STEAM教育のデメリット・問題点4つめは、ICT機器の遅れです。
先述したように、日本の学校は諸外国と比べてICT活用が遅れています。
学校用、学習用として作られたタブレット端末はほぼなく、さらに学校そのものにWi-Fiが完備されていることが少ないため、STEAM教育が導入しにくい状態です。
おすすめの習い事
STEAM教育についていくためにおすすめの習い事を紹介します。
おすすめの習い事は次のとおりです。
- プログラミング
- 実験教室
- ボーイスカウト
プログラミング
STEAM教育のためにおすすめの習い事1つめは、プログラミングです。
STEAM教育の一環として、小学校からプログラミングが授業に組み込まれています。
(プログラミングという科目があるわけではありません)
プログラミングは小学校で習得させようとしているわけではなく、プログラミング的思考を身につけていく目的、パソコンの使い方を身につける目的で導入されています。
プログラミング教室に通うことで、学校でのプログラミングを導入した授業にも対応しやすく、論理的思考も身につきます。さらには、理数系にも強くなるでしょう。
参考:小学校プログラミング教育の手引:文部科学省 (mext.go.jp)
実験教室
STEAM教育のためにおすすめの習い事2つめは、実験教室です。
STEAM教育では、科学や工学の考え方を取り入れた学習もします。「なぜ?」と疑問を持つことが重要で、子どもが仮説を立てて自分で検証する力が求められます。
実験教室では、トライ&エラーを繰り返して実験結果を出すため、STEAM教育に通ずるものがあるのです。
工作や工学も実験教室で学べるでしょう。
実験をすることで、科学に興味が持てるかもしれません。知的好奇心が育まれ、さらには自分で行動をして「これをこうしたらどうなるかな?」と実験する力も身につきます。
ボーイスカウト
STEAM教育のためにおすすめの習い事3つめは、ボーイスカウトです。
STEAM教育のひとつに、リベラルアーツがあります。
生きるための力は、ボーイスカウトの活動でも身につくでしょう。自然体験やキャンプをすることで、ご飯の炊き方、火の作り方など、生きるために必要な知識が学べます。
また、ボーイスカウトは団の単位で活動しますが、年上の子が年下の子をまとめるシーンも多いため、リーダーシップも身につくでしょう。
おうちでできるSTEAM教育
おうちでもSTEAM教育ができます。
ここでは、おうちでできるSTEAM教育を見てみましょう。
- 学習アプリを利用する
- 博物館に行く
- STEAM Libraryを閲覧する
学習アプリを利用する
おうちでできるSTEAM教育1つめは、学習アプリを利用することです。
おうちにタブレットがある場合は、そのタブレットで学習アプリを利用してみませんか。小学生向け・中学生向けのアプリがたくさんあるので、学習アプリを使って勉強をしてみましょう。
タブレットを使うこと、タブレットで学習することに慣れることもとても大切です。
スマホで使えるアプリもたくさんあるので、タブレットがない場合はスマホを活用しましょう。
博物館に行く
おうちでできるSTEAM教育2つめは、博物館に行くことです。
博物館には、一般的に常設展と特別展があります。
特別展は、その時期によって内容が異なりますが、子どもが興味を示すような特別展が開催されていることも多いのです。特に夏休みは子ども向けの特別展が多く、子どもが好きな昆虫や恐竜をテーマにした特別展も。
ちなみに、わたしが今とても興味があるのは、茨城県自然博物館の「うんち無しでは生きられない!」です。
参考:博物館紹介 | ミュージアムパーク 茨城県自然博物館 (ibk.ed.jp)
テーマが「うんち」だなんて、面白いですよね。これ、子どもは興味津々だと思います。
このような特別展は、全国でたくさんあるので、行ってみませんか。
子どもの知りたい! という気持ちが芽生えます。特別展に参加して、わからないこと、気になること、もっと知りたいことは、学芸員さんに聞くとよいですよ。ぜひ保護者が聞くのではなく、子ども本人に質問させましょう。
STEAM Libraryを閲覧する
おうちでできるSTEAM教育3つめは、STEAM Libraryを閲覧することです。
経済産業省のSTEAMライブラリーでは、STEAM教育に関連するコンテンツがたくさなります。
レクチャー動画がたくさんあるので、スマホやタブレットで閲覧してみましょう。内容は、おとなでも「なるほど」と思うものがたくさんあるので、保護者も一緒に観ることをおすすめします。
参考:STEAMライブラリー – 未来の教室 (steam-library.go.jp)
エイベックスダンスマスターやYTJではSTEAM教育はしている?
国内最大級のダンススクールであるエイベックスダンスマスターやミュージカル劇団のYTJでは、STEAM教育は取り入れているのでしょうか。
こちら、結論からですが、エイベックスダンスマスターやYTJではSTEAM教育は取り入れていません…。
まず、エイベックスダンスマスターはダンススクールです。
STEAM教育の科学、技術、工学、芸術、数学のうち、芸術は学べますが、学習塾などではないため、STEAM教育には特に力を入れていないと考えられます。
これはYTJも同じです。
YTJはミュージカル劇団です。歌やダンスパフォーマンスをするため、芸術は学べます。また、台本を読んで、このキャラクターは今どのような心情なのか、と考えることもあるため、心理描写を学ぶこと、状況理解能力を育むことはできますが、特にSTEAM教育を取り入れているわけではないと言えます。
STEAM教育は実践していませんが、エイベックスダンスマスターやYTJではさまざまなことが学べます。特にYTJは、ダンスだけでなく歌、演劇、英語も学べるのが特徴。
(YTJは英語パフォーマンスをするのが特徴の劇団です)
YTJは一般的なダンススクールと比較すると、本番が多いのも特徴で、年4回ほど人前でパフォーマンスをする機会があります。そのため、度胸もつきます。本番に強い子にもなるでしょう。
YTJでは、全国規模のダンス大会や英語歌唱コンクールもあるので、目標に向かって頑張る力も身につきます。
STEAM教育はしていなくても、エイベックスダンスマスターやYTJでは学べることがたくさんあります。
うちの娘はYTJに入ってから、声がとても通るようになり、ハキハキしました。舞台でパフォーマンスすることを見越した指導を受けているので、腹筋を使った声の出し方をしているのです。
よい変化が得られるので、興味があればぜひ通ってみませんか。
まとめ
STEAM教育について解説しました。
STEAM教育とは、科学、技術、工学、芸術、数学を取り入れた複合的な学習のことです。
STEAM教育のメリットは次のとおり。
- 将来に活かせる
- 論理的思考が身につく
- 問題解決能力が身につく
STEAM教育の問題点やデメリットは次の4つが挙げられます。
- 学校側の人材不足
- 地域格差
- 家庭の格差
- ICT機器の遅れ
STEAM教育についていくためにおすすめの習い事は次のとおり。
- プログラミング
- 実験教室
- ボーイスカウト
おうちでできるSTEAM教育のおすすめは次の3つ。
- 学習アプリを利用する
- 博物館に行く
- STEAM Libraryを閲覧する